英語教育大論争

英語教育に携わっているわけではありませんが、この本を読む度に、これからの英語教育について色々と考えさせられます。旧来の文法・訳読中心の英語習得(渡部案)とオーラルやリスニングを重視したコミュニケーション英語の習得(平泉案)のどちらを優先すべきかという約40年も前のこの論争自体、私の中では結論に至ってないこともあり、今でも大変興味をひく内容で、何度読んでも(3回は読んだでしょうか)あきることのない話題です。門外漢としては、知的エンタメ要素もあるのですが、主張の中身はさておいてても、お二人の見識、主張の組み立て方、論駁方法など、そのレベルの高さに感銘を受けることが多くありました。

今後の英語教育改革では平泉案に近い方向性が示されており、これも趨勢なのでしょうが、私自身は、どうしても渡部案の擁護に傾きます(コミュニケーション英語については、時間・労力の割に合わない、得るものが少ない、知的興奮が得られない、というのが個人的な感想です)。まだまだ日常生活において不要と思われる英語コミュニケーションを小中高生の限られた授業時間でやるのには、それ相当な到達目標や緻密な教授法を確立していかないと困難ではないかと素人ながら思ってしまいます。実のところ、授業として貴重な時間に費やさなくとも、NHKの英語ラジオ講座を小中高生の全員に日常的な課外学習として毎日15-20分間受講させるぐらいで十分とさえ思えてくるのです。せめて学校の授業とするならば、外国語を通じて何かを学ぶレベルの負荷を課してトレーニングしておかないと大学での研究に支障をきたすかもしれません。

一方、英語教育というと大学入学前の小中高生レベルにばかりに焦点があたり、大学での英語教育についてはあまり語られない印象です。むしろ、大学受験以降の大学での英語教育のあり方をもっと考える必要性があるのでは、と思うのは、約30年前、大学で(失礼ながら)何となく退屈で覇気のない英語の授業を受けた私自身の実感です。当然、現在は授業もだいぶ変わってきたのでしょうが。。。

 

英語教育大論争 (文春文庫)

英語教育大論争 (文春文庫)